初雪と子供の医療受診体験からUI面で感じたこと。

ついに、来ました・・・初雪!


ここ数日で一気にマイナス4-5度まで寒くなったと思ったら、

一昨晩、急に雪が降り始め。


クラス・メート達は「雪写真」をお互いに投稿して盛り上がっていた。


そして、今日はHarvard – Yale Game.

慶早戦みたいなものでしょうか。


ものすごい盛り上がりで、

レッドソックの本拠地Fenway Parkで行われる試合には

みんな学校カラーであるクリムゾン・レッドの

「Harvard」帽子やマフラーをして出かけていた。


***


さて、娘がここ3ヶ月で、

手足口病・12ヶ月検診・予防接種・風邪・中耳炎・・・

と病院にお世話になる機会が多く、


経済学・財政学の授業で

医療/社会保障政策をやっている期間と被ったこともあり、

しかし、これは制度というより「user experience」としてなのだが、

病院にかかってみて、良いなーと思ったことを主に3点。


1. Primary Care Physician(PCP)のシステム


アメリカは日本と違って(多くの欧米諸国と同様)

プライマリー・ケアのシステムなので、

所謂「家庭医」的な総合診療医がまず診察して、

そこから必要に応じて専門医や大病院に紹介されるというシステムだ。


最初に「登録」作業で住んでいる場所などを伝えて

「女性の先生が良いか男性の先生が良いか」などを聞かれて、

主治医を確定。


先生の時間を予約して診療を受ける。


個人的には、体調が悪いのに他の患者さん達に囲まれて2時間待ち、

5分の診療を受ける、というのより

予約出来て予約通りの方が有り難い。


(但し、予約がすぐできるとは限らないので、「Urgent Care」という当日診療の窓口もあり。当方の掛かっているハーバードの小児科は、当日や翌日で予約が取れなかったことが今のところ無いが、全米レベルではなかなか予約が取れないなどで救急(緊急の場合は予約なしでも救急医療を受けることができる)に殺到するなどの課題もあり。)


ちなみに、先生の診療が遅れているときは


「今前の診療が〇〇分遅れている。

リスケするか、待つか、戻ってくるか?」

と聞いてくれる。


 「どれくらい遅れるかはお答えできません、

名前を呼ばれた時にいなければ飛ばします」


みたいな地獄にはならない。


地元のクリニックだろうが

大病院だろうが(紹介状/選定療養費が必要になったが)


自由に診療場所を選んで、

いつでもアクセスできる日本とは大きく異なり、


そして、財政的な観点からは日本でも転換が必要とされているこの制度、

体験してみて、うまく運用されていれば利用者としてもメリットあると感じた。


2. 電話応対。


(1) 「病院に行くべきか?」の確認


予約制なので、「とりあえず行こう」とはならないので、

まず「病院に行くべきか?」を電話で相談することができる。


私が過去3ヶ月で

この「受診すべきか?」相談をしたのは、2回。


1回目は風邪による熱で

前日に診察してもらったときは大丈夫だったのに

翌日急に悪化、いきなり吐いてパニックになったとき。



2回目は保育園で高いところから落ちて口の中を切って

保育園の先生から病院に行くべきか判断してくれ、

と言われたとき。


どちらも電話の結果、受診予約をするには至らず、

その場で看護師さんから

「どう対応すべきか、どう変化したら受診すべきか」

など細かく指示をもって解決することができた。


(2) 時間外対応


小児科については、24h電話対応してくれる。


日本でも#8000番や自治体窓口など

24h電話すれば対応を答えてくれる窓口があり、

こちらも利用したことがあるが、

確かにきちんと教えてくださるのでとても良いサービスだ。


違いがあるとすれば、

電話口で応対してくれる看護師さんが、

娘のデータを見ながらアドバイスできるということだ。


処方された薬をすでに前日から服用しているのに、

深夜11時頃に娘の熱が40度まで上がって、

心配になったので窓口に電話を入れたところ、


看護師さんが折り返してくれ、

(折り返しが来るのに15分くらいかかったが、

緊急の場合は救急番号に掛けるよう分けられているので、

この番号に電話した時点で、少しの待ち時間は問題ない)


処方されている薬の量や日付を見て

「この薬は効果が出るのに48hくらいかかる場合があるから、

今日はまだ熱が出ていても大丈夫。」

と判断した上で、色々対応方法をアドバイスしてくれた。


「解熱剤は服用をして、もし1時間経って変わらなかったら、もう一度電話して。」

「明日熱が下がらなかったら場合も診療予約を入れるので電話して」

など、フォローアップや診療予約に繋げられるのも違いだろう。

(最悪、主治医への連絡や、開いている場所での夜間診療もあり得る。)


3.  電子化!!!!!! (とUIの使いやすさ)


何と言っても、諸々の手続きが電子化されているのが便利だと思う。


(1) 個人用ポータルの活用


個人用のオンラインサイトは、

保険適用範囲の家族メンバー毎にタブで分けられていて、

家族一括で見ることができる。


勿論、予約状況や予防接種の期日なども管理できるのだが、

 

何より、診察結果の記録が便利だと思った。


どう診断されたのか、

家でどんなケアをすべきなのか、

どんな症状になったらどのタイミングで再診療すべきか、


現在の体重とそれに応じて処方された薬の詳細に加えて、

市販の薬の使用量・使用方法なども、

きちんと書いてある。


先生の話を聞き逃していたり

サラッと説明していたことも、

文章で理解でき、後々確認できるので助かる。


その他、薬やアレルギー、定期検診や予防接種などの

記録系が確認できることに加えて、


血液検査の結果や、予防接種の証明書もポータル上で送られてくる。

(もちろん、検査結果に異常があれば病院から直接電話が来る。)


タイムリーに確認できるし、

予防接種の証明書は最初から署名入りPDFで送られてくるので、

保育園に提出する際など、申請待ち時間や事務手間を省くことができる。


(2) 薬局との連携。


薬局に処方箋の紙をピラピラ持っていく必要は無く、

病院の下の薬局や家の近くの調剤薬局を登録してもらうと、

診療時処方箋を出したデータを送信してくれる。


リアルタイムでデータに基づいているので

移動している間に薬が出来ていており、

名前を言うだけで受け取れ、待ち時間も殆ど無い。


その他、

小さなところでは、当然問診票は端末入力だし、

受付での書類サインはなく、端末に電子サイン。

保険証は携帯アプリバージョンもあり。


***


これは何度も書いている気がするが、

個人的には日本の「紙文化」は、

「現金文化」と並んで、今後、絶対に変えるべきだと思うところだ。。。


本当に時間の無駄が多い。


妊娠してから、

検査を自治体が補助してくれるのは大変ありがたいものの、

毎月検査に行くたびに、

貰った複写の紙に生年月日や予定日など、

同じ情報を毎回毎回記入するのは時間の無駄だし(自治体によるかも)、


娘の予防接種や発育などの重要情報が

母子手帳という紙媒体に入っているし、


日本の薬局でくれる、

薬の写真や効能や使用量などが書いてある紙は

確かに理解が深まるし便利でありがたいが、

「紙!捨てちゃうよ!」と思うし、

お薬手帳も「紙にシール!いつも持ってられないよ!!」


と思ってしまう。


最近予約システムぐらいはウェブからできるところが増えた気がするが、

それでも各病院ごとにログインIDなんだっけな・・・と苦労した末、

予約だけである。。。(そして結局予約しても待つ場合が多い)


一部自治体で先行している母子手帳の電子化は、

利用しやすければ本当に良いと思う。


ただ、母子手帳だけ切り離されているのでは尻切れトンボ気味で、

医療情報全体が管理できる方が有り難い。


医療情報の電子化は、

医療の最大の受益者たる高齢者に受け入れられるかが課題になりそうだが、


本来的には電子化で一番恩恵があるのは

過疎地域のお年寄りなのでは無いかと思うのだ。


また、勿論、情報管理の重要性が上がるが、

セキュリティ技術も紙文化の中では向上仕様が無い。


データの活用は医療技術やサービス・政策向上にも寄与する可能性もある。


***


ちなみに、今回は「良いところ」をピックアップして書いたが、


子供の薬が蛍光ピンク?みたいな超ドギツイ色でバブルガム味だったり

(この辺は私が中学の時に体験した20年前からあまり進化が無いらしい。。。)


看護師さんが、手が塞がっていたので、

注射器の蓋を口で開けて「プッ」と下に吹いて投げたり、、


などアメリカンなユーザー体験も、勿論あり。


****


最後に、医療制度全体については、

私はアメリカが良いとは全く思わない。


今回私が体験したのはアメリカの医療制度の光の部分であって、

医療格差や費用、アクセシビリティ、あらゆる面で闇は果てしなく深い。

先の中間選挙でも大きな論点となっていた部分である。


ちなみに娘が掛かっているの病院はオバマ・ケア(Accountable Care Act)で制定された

医療グループ一体でのサービス向上・効率化を意図した組織(ACO)に属している。

そういった意味でも上手くいっている一例だろう。


***


日本では、少ない人数の医師の能力・労働に依存している状況や

高齢化等マクロ要因による費用増・地域格差など

確かに課題はあるものの、


根本的なところで日本の皆保険/医療へのアクセシビリティ、

そして医療の質は世界に誇る資産であると思っている。


ただ、忙しい働く世代に合わせた「UI」としては、

本当に「こうだったらいいのに」と思うソフト面が、

こちらでは実現していると思ったのだ。


働く子育て世代にとっては、時間のマネジメントは最重要課題だ。

こういう部分のサービスによる効率化だけでも、

意外と大きな親世代の支援になるのでは無いかと思う。


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